水面

水面。三年前くらいに見た、お笑い芸人さん。すごくすごく良かった。あのひとと二人で観に行ったな。あの日は雨が降っていて、黒のストッキングだと勘違いして買ったニーハイストッキングを履いてた。喧嘩したあとだったか、何かもやもやしながら、傘をたたんだような記憶がある。今思えばあの時もうすでにあのひとの顔に影がさしていた気がする。優しい世界だったなー。なんにも、いらなかったよ。そんなことは、今だから言える。何もいらなかったよなんて、思ったことはなかった。あなたが欲しかった。あなたは私を愛していて、私はそれを痛いほど分かっていた。でも、心だけじゃ足りない。手に入らない部分、会えない時間、知らない部分、あなたの体も未来さえ、私は欲しかったんだ。今思えば、そんなものは全部いらなかった。知らない部分なんて知らなくていい、あなたとの未来なんていらない。今、あなたが私を想ってくれていること、ただそれだけで、幸せだった。嘘になってもいい、約束なんていらない。その瞬間の思いが本物なら、ただそれだけで。思い出の中でいつも笑ってる、苦しそうに笑っている。君は私を想ってくれたのにね、私は君のこと愛せなかった。自分のために君を傷つけることしかできなかった。それならいっそもう一生許さないで欲しかった。あなたが私を殴り倒したこと悪いなんて思ってない。それ以上のことを私がしてる。でもごめん、私はあなたが許せない。冗談みたいに抱かれても、当然のように振られても、私はどうしても、自分のことも、あなたのことも、許してあげられない。私は君を幸せにできない。さようなら仕方ない。さよなら