いつでもおいで

中2の頃にショートカットにして以来、ロングにしたことがない。ずっとミディアムとショートの繰り返しだ。あのひとに出会って、髪が長いほうが好きだと聞いて伸ばした時が1番長かったけど、それでもミディアムくらいだった。

中2までずっとずっとロングだったのもあるし、母さんのショートカットがすごく綺麗で憧れた、のもあるし、母さんがあんなに大事にしていた髪を切った時、なんともいえない気持ちになった、というのもある。色々な気持ちがあったけど、そんなのはただの理由づけで、自分の複雑な心情を髪を切ることでさっぱりしたかったのだと思う。

変わりたくて、でも変わらなくて。自分が嫌いで仕方ない。自分が憎くてたまらない。死にたい、とうっすら思うようになったのもその頃だった。

人はストレスがたまると髪を切りたくなる(ヘアスタイルを変えたくなる)傾向がある、らしい。嘘か本当かしらないけど、私には当てはまっているような気がする。

昔から美容院にいくととても気持ちが落ち着く。一時的にではなく、けっこうずっしり長持ちするタイプの落ち着き。くせっ毛だけど、柔らかい、自分の髪が大好きだった。私はショートヘアがよく似合う。ロングには敵わないけど、ロングの次にショートが似合う。もともと顔が濃くなくて、歯並びは邪悪だけど、当たり障りのない顔をしているので似合わない髪形は相当失敗しない限り無い、と言いつつ二度も失敗している。

おととい、ショートヘアにしよう、と思い美容院を予約した。でも、なんとなく、伸ばしたいなあ、とも思った。昨日、美容院に行って結局、「カラーはこのトーンのダークアッシュで、カットは前髪と顔横だけお願いしたいんです。」と言った、根性なしめ、と思った。切らなきゃいけないのに。もう飽きているのに。

整えるために1センチだけ切ってもいいですかと言われて、え、と言うとそのほうがきれいに伸ばせますよと言われた。結局なんやかんやで12月から切っていない私の髪はとんでもないことになっていたみたいで、後ろだけ2.5センチ切りますと言われしてもらった。長さはそんなに変わらないが、綺麗になった。「メンテナンスのカットは4ヶ月に1回くらいしにきてください。(カラーは2ヶ月に1回)」と言われ、もう11月末まで切らなくていいのかと感動した。と同時に少しさみしくもあったけれど。カラーは暗髪のときはあまりしない主義だからその目安は無視する。

確かに、伸ばしっぱなしの私の髪はみんな好き放題のびたりのびなかったりしていて、そして傷んで広がって、ぜんぜんきれいじゃなくて。だから飽き飽きしていた。

今日帰って自分の髪を見てとても嬉しくなった。髪を伸ばすってこういうことなんだなと思った。綺麗に伸ばすにはメンテナンスが必要、とくに私は飽きやすくてすぐに切りたくなるから、髪だけじゃなく気持ちも整える。

本当にお金がなくてもシャンプーは変えなかった。

私は自分の髪が大好き。柔らかくてなめらかな手触り。いつも伸ばしたかった。あのひとにであった時、伸ばせていた。だからあの頃は、と思ったけど、そういえばカッターで腕を切るばかりしていたな。結局いつも現実を見ず問題と向き合おうともせずにただ自分の感情を乱暴に処理しては毎日過ごしてきたな。だけど、それも私にとっては大切な過去で、ずっと胸にしまっておく。大切にしたいものを大切にしよう。背伸びしたり合わせるためにすり減らすのはやめよう。自分が嫌いなら嫌いでいい。憎いなら憎めばいいや。でもどんなに嫌いで憎いものも、ただ苦しめればいいというわけではない。悪いことをしたら必ずバチが当たる、なんていうのは他力本願に聞こえるよ。だから思い切り仕返しするべき。だけど仕返しして気分が晴れたことなんて一度でもあったか。晴れない。だから自分の気持ちを晴らすのではなくしかるべき対応をすればいい。目には目を、ただそれだけ。そのくらい端的でいい。だけど自分に対して仕返しするのは違う。傷ついた分だけ目に見える傷をつけるのは違う、大切なものを壊すのもちがう。

目には目を、傷にはカットバンを。人にも自分にもそうしたい。嫌いで憎くて仕返ししても、傷にはカットバンを貼ってあげられる人間でいたい。その人すべてを否定するようなつまらない人間に、なりたくない。